9月18日(土)てれてれてれてと歩いている。 水辺に棲む水虎はキイキイキィと鳴いている。 テレビに映っていたバス釣り番組の収録をしているオッさんは、ど田舎の農業用のため池の岸辺で猫背になりながら一人満面の笑みをたたえ、舌足らずな解説をブツクサと加えている。渺々と風が吹き、松林を揺らしていた。周りは一面、ふらふらと不気味に睨みをきかせる向日葵があるばかり。その奥、画面の上端には黒々とした馬鹿でかい国道が通っているのが見える。その上をゆく影はない。ゆらゆらと、陽炎が画面を立ち上る。 そんなオッさんも、まさか「これからのシーズンはバス釣りに最適です!」なんて事をもうすぐ期末テストを向かえようとしている中学生に向かってほざくことになろうとは思っていなかったのだろう。鼻っ柱に汗を浮かべにこにこと笑っている。再放送でもあるまいに。 雪は、あっというまに世界を一面の白で覆い尽くしてしまうなんていう。それは嘘だ。雪を降らす雪雲は、対照的な色をしている。皆、それをわかっていない。人知れず善行を積むなんてことはもう古いのに。それでも皆、天使だなんていう。知らないふりのできない僕は、自分だけが真実を見抜いているんだと、精一杯憂いた顔をして空を睨む。 「やれやれ…」 そう呟いていれば、小説の主人公にでもなれる気がして。 一面真っ白の世界。僕だけが、唯一色づいた存在で在る筈なのに、とぎれた雪の合間から、僕を圧迫する黒雲。侮るな。教えてやるよ。 「今、世界が終末をむかえていることを知ってるかっ!!?」 …… 「それでぇ、あのぉ…エホバという神が…、大いなる戦いを…」 黙したままのインターホンに向かって、母は語りかける。僕は母の側により、雪の重みで傾いだ傘を差し向けた。 「次、行こっか」 「………」 傘でもささなきゃやってられない。二度と空なんか見上げるもんか。物語に解説はいらないんだよ。再放送でもあるまいに。 |