12月11日(木)

 こんな夢を、みた



 空はぶ厚い雲に覆われ、どんよりと曇っている。
 まだ八月だというのに、その日は季節外れの雪が降っていた。
アルバイトを終えた帰り、僕は駅のホームに立っていた。何故だか持っていた冬物のパーカーをTシャツの上から被る。
 寒さに首を竦めながら、駅名の書かれた看板に寄りかかり、うっすらと雪の積もった線路を眺めていると、向かいのホームから男が線路内に飛び込んだ。
 レールを枕にするように、仰向けに倒れたまま男は動かない。
 ―ああ、自殺、かな
 しかし、何故だか周りに気づいた人はおらず、僕もそのまま、ぼうっとその男を見つめていた。
   男は小説家らしい
 そのうちに電車がやってきて、男の上を通過する。「ボグッ」という音と共に鮮血がほとばしる。僕は飛んできた血を避けようとあわてて一歩後ずさるも、どこにも血の飛んだ後はなく、電車もそのまま駅を通過していった。
 どうやら急行らしい
 しかし問題はそこではなく、誰も男が轢かれたことに気がついていないことなのだが…。僕は少し頭のおかしな姉と違って「見える」類ではないはずなのに。
 さすがに不思議に思い、あたりを見回すと、数人がキョロキョロと不安そうに周りの様子を窺っている。どうやらその人たちにも僕と同じものが見えたらしい。
 目が合うと「今の、見ましたよね?」と、無言のやり取りを交わし合う。しかし実際に口に出して言う者はなく、僕は次の電車に乗りその場を後にした。

次回、夢十夜第二話「螺旋」
に続かない。